静岡県静岡市は2015年に「共働き子育てしやすい街ランキング地方編」で第1位に輝いた経験のある都市です。そのため、保育が充実しているように思われます。ですが、現実は県全体での待機児童数は2017年で456人と、前年より6人上回る結果が出てしまいました。これは、すでに保育園の定員増加をはかり、合計で3300人の子どもを受け入れたうえで起きた出来事です。保育サービスを提供する行政側と、必要とする県民側との間にニーズのずれがあるのではないか、という声もあがったことから、県は改めて保育ニーズの調査を実施することにしています。
保育・子育てニーズ対応チャレンジ事業
静岡県の子育て支援は比較的充実しています。まず、子育てを経験したことがある人たち向けに、保育士パートなどへの就職を呼びかける「保育・子育てニーズ対応チャレンジ事業」が実施されています。これは、再就職を考えている保育関係の人材や、子育て経験者の主婦などに向けて行われており、保育士資格の取得などを応援するイベントです。県内の9か所で実施され、保育資格取得のためのアドバイスや、制度の利用の説明などが行われました。
保育士修学資金等貸付制度は、保育を目指す全ての人材に開かれている制度です。将来保育の仕事をしたいと考えている学生の学費貸付や、保育士パートの保育士取得受験費用などの貸付を無利子で行っており、保育人材の確保を目的としています。保育士就職支援研修会も定期的に開催され、保育士資格を取得しており、さらに保育の仕事をしたいと考えている人材であれば誰でも参加ができるようになっています。
このように多くの取り組みがされていますが、なかなか保育のニーズが満たされない理由のひとつとして、「利用調整基準点」が保育の受け入れ側に使用されていることが指摘されています。これは、入園選考を園が行うために利用するもので、その家庭がどのくらい保育を必要としているかを判断します。ですが、希望する園によって判定はまちまちとなるため、同じ点数だったとしても希望先の園によっては入園できる場合と、そうでない場合が生じてしまいます。誰もが希望する園に入園できるようにするには、問題がまだ多くあることがわかります。
静岡県の保育士パートの平均時給は800円~900円程度
県の保育士パートの平均時給は880円~900円程度といわれており、正規雇用の保育士の場合でも月収は15~18万円のあたりであることがわかっています。さらに、都市内の移動や県の郊外などへのアクセスには自家用車が必要となることがほとんどです。そういった費用の補助を出す園の求人は滅多にないので、保育士の仕事に負担がかかっている状況です。
保育園が集中しているのは主に静岡市の葵区・駿河区・清水区や浜松市東区・北区のあたりです。この辺であれば交通の便も整っているので、負担が少なくお仕事ができる可能性があります。どちらの市も子育て支援には力を入れている街なので、共働き世帯が多いのも特徴です。保育士に対するニーズも多く、開園予定の保育園などもあります。
求められている人材は、正規雇用の保育士もそうですが、保育士パートのフルタイム勤務などの求人が他県より多い傾向が見られています。まずは人員を確保し、園を運営することを最優先と考えるケースが多いことがわかります。そのため、県内での保育士パートを希望するのであれば、週に何日かでも長時間勤務が可能であるということが条件に入る可能性があります。もしくは、ショートステイや夜の遅い時間までの保育のミッドナイトステイに勤務時間を絞ることができる、フレキシブルな人材が好ましいといえるでしょう。
保育士・保育所支援センター
実際に保育の現場を見なければ判断しづらいという場合には、県が設置している保育士・保育所支援センターを利用するのがおすすめです。このセンターでは、事前に契約している保育園の体験保育を定期的に行っています。この体験保育ができる園の数は年々増加傾向にあり、保育の仕事をしたいと考えている人にとっては事前に現場を把握するチャンスです。自分の考えと実際の現場のニーズがあっているかどうかの判断材料として活用することができます。このセンターでは保育士への就職のあっせんや、保育士のキャリアアップへのアドバイスも実施しています。
静岡県では他にも、行政の学童保育を担うことができる地域子育て支援員の増加計画をたてたり、放課後保育指導員など民間からの手助けを広く求めています。加えて、保育士の資格がなくても保育の現場で働いている人を冊子で紹介するなどの試みも実践しており、資格や経験がなくても保育に関心がある人であれば、誰でも保育のお仕事ができる態勢を整えている最中です。静岡県での保育ニーズはこのまましばらく強い状況が続くことが予想されます。パートとして携わるあいだに、キャリアアップや収入アップを考えることもあるかもしれません。そういった際には、県内の支援センターや就職フェアなどを利用してみましょう。保育の人材は非常に必要とされていますので、自分の力を最大限生かすことのできる職場を見つけることが大事です。