保育に関する問題というのは年々深刻化しています。今までは男性が仕事をし、女性が家事をするというのが基本的だったため幼い子どもを預ける必要がなかったのですが、現代では共働きが一般的になってきているため幼い頃から子どもを保育園や幼稚園などに預けなければならないという家庭が増えたのです。
更に言うならば、祖父母から離れた所に世帯を構える人も増えたため「両親が共働きであっても近くに祖父母がいるからわざわざ保育園や幼稚園に預ける必要がない」という人が減ってしまったのです。女性の社会進出、そして親族内での距離というものが保育の需要を一気に高める結果となりました。
とは言え保育業界はそう簡単な仕事ではありません。成長期である様々な年齢層のお子様を預かるためケガや事故が起こらないようきちんと面倒を見てあげなければなりませんし、年齢や成長に合わせて遊びや接し方も変えなければならないので責任も重く、ただ子どもが好きだという理由だけではつとまらない大変な仕事です。需要が高まっている反面、人材が不足しているという状況から保育の現場がなかなか整わず、待機児童がどんどん増えてしまっているという現状は非常に深刻です。
認定こども園は保育園と幼稚園のいいとこどり
保育関連の問題を少しでも解決させていかなければと政府が動いているプロジェクトの中に、保育園と幼稚園の良い所をミックスさせようという考えから生まれたのが認定こども園です。
認定こども園で働くためには、保育士と幼稚園教諭の2つの資格が必要です。しかしこの2つの資格を持っている人というのはそう多くはありません。そこで政府が考えたのが保育士資格取得特例制度というものです。保育士資格取得特例制度は保育士資格または幼稚園教諭免許状のどちらかを持っている人であれば、短期間で負担が少ないもう片方の資格を取得することができるという制度です。つまりどちらか一方の資格しか持っていなかったとしても認定こども園で働くことができるということなのです。
この制度は厚生労働省が定めた新しい政策ですが、「子ども・子育て支援新制度」は厚生労働省だけではなく国をあげて取り組んでいるものなので一刻も早く待機児童0を実現させるためには必要不可欠な政策の1つだと考えられています。
特例制度のメリット
保育士資格取得特例制度に期待できるメリットというのは実はとても多いのです。まずあげられるのが保育の人材確保です。2つの資格をどちらも持っている人と限定してしまうと非常に狭き門になってしまうのですが、それをこの制度で門を広げてあげることによって人材の確保が期待できます。そうすれば認定こども園自体の窓口も広くなり、待機児童を減らすことが期待できます。子育てをしながら働かなければならないという家庭にとってはとても大きなことです。もちろん子どもを持つ親にだけメリットがあるのではなく、働く側にもメリットがあります。
就職難が問題視されている現代では、求職者が溢れているにも関わらず保育の現場は常に人材不足です。なぜこのようなことが起こり得るのか、それは資格を持つ人に限定してしまうからです。つまり保育に関してしっかりと専門的に学び資格を持った人でなければ勤めることができないとしているのです。大切なお子様を預かるのでしっかりと知識を持っていなければならないことはもちろんなのですが、それでは異業界から転職を考えている人には選ぶことができません。そういった問題を解決してくれるのがこの制度です。この制度は2つの資格を持たなくてはなりませんが、通信講座などを利用すれば短期間で資格を取得することも可能です。そのため本業に従事しながら保育を学び、資格を取得後に転職をするということも十分に可能なのです。つまり社会人として働いていながらも新たな夢として保育の現場を目指しやすくなったのです。こうして保育の仕事の窓口を広げることによって、働く側にとっても子どもを預ける側にとっても大きなメリットを生み出すことが期待されています。これらのメリットは最終的には待機児童0という大きな目標に結びついており、それを実現させるためには必要不可欠な政策だということで厚生労働省がこの制度を採用したのです。
特例制度のデメリット
メリットがあるということはデメリットも必ず存在します。資格を取得するためには少なからずお金も時間もかかります。ただでもらえるものではないのでそれをきちんと理解しておくことが大切です。また認定こども園というのは比較的忙しくなりがちです。保育園と幼稚園の良い所をミックスしてつくられたものなので、多くの子どもたちに対応しなければなりません。イベントも多くお子様や保護者としては多くの経験をし多くの思い出を残すことができるとあって魅力的なのですが、やはり勤める側としてはそれだけ大変であるということになるので、勤めることが決まったとしても手放しで喜ぶことはできません。
この制度の認知度は徐々に広まってきてはいるもののまだまだ一般化してはいません。保育の現場で働きたい人はもちろんのこと、子育てをしている家庭でも知っておくべき制度だということを忘れてはなりません。